グリーンバックス法律事務所

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交通事故

交通事故によって、車が破損し修理代がかかってしまった場合、怪我をして入通院を余儀なくされその間仕事をすることができなかった場合などには、加害者に対してその損害の賠償を求めることができます。

もっとも、具体的な損害賠償額をいくらとするのが妥当かを判断するにあたっては、事故の態様に照らした場合の過失割合や、損害の算定方法、事故と損害の因果関係といった様々な問題が存在するため、被害者と加害者の間で、これらを巡って紛争となることが多いのが現状です。

過失割合・過失相殺

自動車どうしが道路上で衝突する事故が発生した場合、通常は、どちらか一方が加害者、他方が被害者ということになります。
たとえば、片側2車線の道路を走る車が無理な車線変更によって隣の車線を走る車の前方に割り込んだ結果、隣の車線を走っていた車と衝突してしまったという場合、無理な割り込みを行った側が加害者、割り込みをされた側が被害者とするのが通常と思われます。

しかし、このように加害者・被害者の立場がある程度はっきりする場合であっても、必ずしも、被害者が加害者に対して、自らに生じた損害の全額を賠償させることができるわけではありません。
なぜなら、割り込まれた側の車にも前方に注意して安全に走行し、他の車との衝突を回避すべき義務があったといえ、結果的に衝突に至ったということは、この点の義務を少なからず怠った(過失があった)と評価され得るからです。

このように、どちらかがより悪い(過失があった)といえる場合であっても、他方が一切悪くない(過失がない)とは言えない場合には、損害を当事者間で公平に分担させるべく、「過失相殺」がなされます。
たとえば、双方の過失の程度を、80:20といったように割合で評価し、被害者に生じた損害のうち、その80%は加害者が負担し、その20%は被害者自身が負担するという結論が導かれます。この場合、加害者側にも損害が生じていれば、その20%は反対に被害者側が負担する必要があるということになります。

交通事故による損害賠償請求事案では、このように事故態様に照らして双方の過失割合を評価し、過失相殺をする必要がある事案が数多く存在しますが、過失割合の評価に影響する事故の態様そのものについて当事者間で主張が対立したり、事故態様自体には争いがなくてもこれを前提とした場合の過失割合の評価について当事者間で主張が対立したりすることが多いのが現状です。

加害者側であっても被害者側であっても、相手方が主張する過失割合に納得ができないという場合には、まずは弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

損害の算定・因果関係

自動車どうしの衝突事故であれば、通常、物損として自動車の修理代や修理を行う期間中の代車料などの損害が発生します。
この点、事故によって自動車がいわゆる全損状態となった場合(つまり修理して使うことができない、或いは修理代が車の時価を上回ると想定される場合)に、いくらの損害が生じたとすべきかが、車の時価の評価方法との関係で争いになることなどがあります。

加害者側であっても被害者側であっても、相手が提案した賠償額(車両時価額)に納得できないという場合には、まずは弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

交通事故によって、怪我を負った場合、或いは死に至った場合、これによって生じた損害は、人損として相手方に賠償を求めることができます(ただし、相手方に一切過失がない場合を除く)。

怪我を負った場合に相手方に賠償を請求し得る損害項目としては、典型的なものとして、以下のようなものがあります。

1 治療費
事故による傷害を治療するために要した手術費、入通院費等については、実際にかかった費用を損害として賠償を求めることができます。
2 通院実費(交通費等)
事故による傷害の治療のために通院を余儀なくされた場合、通院に要した交通費は損害として賠償を求めることができます。
3 傷害慰謝料
怪我をして入通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛については、これを金銭に評価した額(慰謝料)を損害として賠償を求めることができます。傷害慰謝料の額としていくらが妥当であるかは、実務上、入院・通院を余儀なくされた期間(通常怪我の程度に比例すると考えられる)を重要な考慮要素としたうえで、その他の特別な事情があればこれも考慮し、個別的に認定されています。
もっとも、入通院の期間が重要な考慮要素とされる関係上、傷害の程度に照らして通院が不当に長期間で通院頻度も不規則である場合などには、事故と通院の相当因果関係が不明確となってくるため、単に全通院期間を前提として慰謝料額を算定することが妥当でないこともあり、その点の評価かが争点となることが少なくありません。
4 休業損害
怪我をして入通院を余儀なくされ、仕事をすることができなかったことにより、本来であればその間の賃金を得られたはずであるのに、これを得ることができなかったという場合には、その間の賃金相当額を休業損害として賠償を求めることができます。
実際に会社等に勤務して働いている人については、日額賃金を計算して、働くことができなかった日数分を休業損害として請求することになります。
これに対し、主婦の場合は、家事等をすることで賃金をもらっているわけではありませんが、家事等をできないことによって損害が生じていることは明であることから、実務上は、年齢に照らした平均的な賃金を仮定し、これに基づいて休業損害が算定されています。
休業損害については、そもそも、算定の基礎とすべき収入額をどのように認定するか、長期間の休業となった場合に事故と休業との因果関係がどの範囲で認められるか、といった点が争点となることが多いといえます。
5 後遺障害逸失利益
事故によって怪我を負った場合、その後の治療によって完全に回復する場合もありますが、場合によっては、治療によってはこれ以上回復が見込めない状態、つまり後遺症が残った状態になることがあります。
後遺症が残ると、その程度に応じて、健常な状態で行うことのできた労働が一定程度できなくなる(労働能力を全部又は一部喪失する)ことから、労働能力の喪失によって得られなくなると考えられる将来の稼働利益を、後遺障害による逸失利益として、賠償を求めることできます。
このような後遺症が残った場合には、症状が固定した段階(これ以上治療によっては症状の回復が期待できないという医療判断が下された段階)で、後遺障害の等級認定の申請をすることになり、その程度に応じて第1級から第14級までの等級認定を受けることになります(ただし、該当しない旨の判断もあり得ます)。
実務上、後遺症によって労働能力がどの程度喪失されたかは、基本的に認定された等級に応じて一定の水準で評価されており、認定等級に応じた労働能力喪失率に従って、後遺障害逸失利益が計算されています。
後遺障害逸失利益については、休業損害と同様、算定の基礎とすべき収入額をどのように認定するかが争点となり得る上、実際の症状に照らした場合に後遺症の等級を何級と評価するのが相当かという点が逸失利益の算定において極めて重要となることから、この点が問題となるケースが少なくないといえます。
6 後遺障害慰謝料
事故によって後遺症が残った場合には、これによる精神的苦痛について慰謝料を求めることができます。この後遺障害慰謝料は、実務上、後遺障害の認定等級を重要な判断要素として算定されています。
したがって、後遺症の等級を何級と評価するのが相当かという点が慰謝料額の算定において極めて重要となることから、やはり、この点が問題となるケースが少なくないのが実状です。
7 その他の損害
以上の他にも、事案によっては、さまざまな特殊の損害があり得ますが、基本的には事故との相当因果関係があるといえる損害であれば、相手方に賠償義務が生じるのが原則です。
たとえば、事故による長期間の入院によって大学の定期試験を通年受けられず、留年を余儀なくされてしまったという場合の追納学費などは、事故前のもともとの成績からして留年が確定していたというような事情のない限り、事故と因果関係のある損害として相手方に賠償を求めることができるといえるでしょう。

相手方との交渉

事故の相手方(特に加害者側)が任意保険に加入している場合、通常、以上のような過失相殺論、損害論を前提として、保険会社から損害賠償額の提案がなされます。
その内容は、上記両理論を踏まえた適切な内容である場合もありますが、時には、過失割合の評価が事故態様に照らして不適切であったり、損害項目ごとの評価額が通常認められるべき水準の額に照らして不相当に低額であったり、といったことがあるのも現状です。

しかし、事故当事者個人に比べると、保険会社は交通事故に関する知識、情報、経験とも優越していることがほとんどですので、個人の立場で保険会社と交渉をして額の見直しを求めることは、色々な意味で難しい場合が多いと思われます。したがって、本来得られるべき賠償額を喪失しないためにも、保険会社からの提案額に疑問があるときは、まずは弁護士等の専門家に相談して内容の適切性を分析してもらい、場合によっては代理人としての直接の交渉を依頼することも積極的に検討されることをお勧めします。

自賠責保険会社に対する被害者請求

相手方が任意保険に加入していなかったり、加入していても任意保険会社との間で交渉が難航し、早期の支払いが実現されない場合などには、一定の損害については、相手方の加入する自賠責保険会社(法律上強制加入)に対して、直接支払いを求めることができます(被害者請求)。

このような自賠責保険会社に対する被害者請求は、対人賠償に限って認められ、かつ賠償額に上限がある一方、通常の過失相殺は行われない(請求者に重過失がある場合に一定の減額がなされるにとどまる)という特徴があります。
したがって、ある程度の過失がある者(加害者側として扱われる者)であっても、事故によって人損を受けている場合には、被害者請求制度を利用することによって、自身に生じた人損について一定の回復を図ることが可能です。

被害者請求を行うにあたっては、所定の書式に従って支払いを求める書面を作成し、必要な書類を付してこれを相手方の自賠責保険会社に送付する必要があるので、被害者請求を検討される場合には、まずは弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

交通事故訴訟

事故態様について当事者間で争いがあったり、損害の存否や算定方法等について当事者間に争いがある場合、弁護士を介して交渉をした場合であっても、任意の和解解決が実現しない場合があります。

そのような場合は、損害賠償請求の訴訟を提起することになります。
訴訟では、刑事手続上作成された事故の実況見分調書や当事者の供述調書を取得して証拠として提出したり、事故の当事者(場合によっては目撃者)を裁判官の面前で直接尋問したりといった方法によって事故態様を立証するとともに妥当な過失割合を説得的に主張し、損害についても収入額を基礎づける資料、通院期間や頻度を基礎づける資料、後遺症の認定等級を示す資料、その他損害の存在及び事故との因果関係を基礎づける資料を提出して、妥当な損害額を主張することが必要です。

このような訴訟追行は、専門的な知識・技術を要するため、訴訟を検討する場合には、まずは弁護士に相談の上、助言を求めるとともに、場合によっては訴訟代理を依頼することも積極的に検討されることをお勧めします。

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